2011/06/10

6月9日

・・・・電話を切る前に・・・、15年前の今日のことを
少しだけ話してもいいかな? うん、すぐ終わるから。

・・・・その前に8日の夜のことから話したほうがいいかもしれないな。
電話で、うん、あのころは携帯電話なんて持ってなかったからね。
当時はまだポケベルだったんだよ。覚えてる?
大学の授業が終わったら、全速力で公衆電話に駆け込んでさ。
そうそう、最初に【※2※2】を押すの。めちゃくちゃ早いコ、いたよね(笑)。

あの日は子機を部屋に持ってって、ベッドに座りながら、
「彼」と話してたの。・・・うん、大切な「友だち」。
内容は忘れちゃったけど、はは、楽しく話してた。
じゃあ、明日ねって「約束」して電話を切ったの。

そしたら、その翌日。うん、9日ね。
「約束」の場所に「彼」がいつまでたっても現れなかったの。
ベル、・・・あ、ポケベルね。「彼」はポケベルなんて持ってなかったから、
その場から離れるわけにもいかなくてさあ。イライラしてたよ。
そしたら、友だちがフラフラしながら近づいてくるの。
目がうつろで、顔が蒼白で・・・ 不思議なんだけど、それでピンと来たの。
・・・「彼」ね、9日の朝にはもう亡くなってたんだって。

うーん、「私」自身、とても混乱してたから、当時の状況は正直あまり覚えていない。
でも、「彼」の最期のことば、うん、あなたがいつも電話を切るときに言うことば、
・・・そうそう、それ。それだけは今でも鮮明に覚えてるんだよね。
ははは、だぶったことはないよ(笑)。

たぶん、1年くらいは引きずってた気がする。
でも、じょじょにだけど「彼」のことが思い出になっていくんだよね。
それがつらかったんだよね、すっごく。え? うん。
なんて言うんだろう。思い出になった時点で、「彼」が過去の人になって、
この世から本当にいなくなってしまうような感じかな?
「私」が勝手に「彼」にとらわれていたんだろうなあ・・・・
さすがに今日で15年目だからね。もう、そういうことはないよ。
1年に1度、今日だけ少し「彼」のことを思い出す程度かな?


・・・・・何でこの話をしたかっていうとね。
今日、あの震災の日からずっと行方が分からなかった友人からね、
メールが届いたんだ。たった2行の短いメールだけど。
うん。すごくうれしくて。信じれらなかった。今でも信じられない。

それだけじゃなくて、友だちの子どもが無事に産まれたの。
そうそう、前に話してたコね。昨日の夜、陣痛が来て病院に行ってるから・・・
24時間くらいかかったのかな? ちょっとハラハラしてた、仕事そっちのけで。
え!? 仕事は毎日ちゃんとやってるよ~(笑)。息抜きも必要でしょ?
「私」、タバコやめたから、休憩のタイミングがなくなっちゃったんだもん。

うん。ちょっと難産だったのかもしれないけど、結果は母子ともに健康。
パパになった友だちから、赤ちゃんの写真が送られてきたの。
ちょっとブレてるんだけど、ママ似のかわいい子だった。
早く産まれてきちゃったから、ちょっと小さいのかなと思うんだけど、
それでも強さを感じる。無限の可能性にあふれてるっていうのかな。
その可能性を守ってあげなきゃね、大人の「私」たちが。


・・・単なる偶然なのかもしれないけど、偶然じゃないって思っちゃうよ。
15年前の6月9日に「彼」が突然いなくなって、
15年たった今日、約3カ月ぶりに友だちの所在が分かって、新たな命が誕生した。
こういうことってあるんだなあって思ったんだよね。

・・・・あ! 長くなっちゃったね。明日、早いんでしょ? 仕事。
はは(笑)。いつも通りに切っていいんだよ。
おやすみなさい。

またね。